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ワクチンのお話

ワクチンについて

ワクチンの副反応について

  • 2023-05-23

 ワクチンの予防接種は、わたしたちや社会を感染症から守るために大切な予防的な方法です。しかし、ほかの医薬品や食品などと同じ様に副作用が起こるリスクはゼロではなく、とてもまれですが健康に被害をおよぼすことがあります。
一方、ワクチンの予防接種をしないことで病気にかかって健康に被害をおよぼすリスクもあります。つまり、ワクチンをしてもしなくても、どちらの場合もリスクはゼロにはなりません。ワクチンをした場合のリスクとワクチンとしなかった場合のリスクを比べて、ワクチンをしなかった場合のリスクが大きい(ワクチンをするリスクの方が小さい)ため、ワクチンは予防接種として使用されています。
ワクチン接種による副反応(副作用)がおこった場合には、医療者による報告制度や健康被害時の救済制度があります。副反応が疑われるときや副反応について心配があるときは、予防接種をした医師にご相談ください。

ここでは、ワクチン接種による副反応について解説します。

「有害事象」「副作用」「副反応」はなにが違う?

「有害事象(ゆうがいじしょう)」「副作用」「副反応」、これらはワクチン接種に関連して使用される言葉です。
「有害事象」や「副作用」は、ワクチンを含む医薬品や手術などの医療行為に関連して使用され、「副反応」はワクチン接種に関連したことがらに限定して使用されます。どちらも「ワクチン接種をしたあとに起こった症状」に対して使用される言葉ですが、しばしば混同されたり、誤解されて使用されていることがあり、注意が必要です。

 ある原因があって、ある出来事がおこったとき(結果)、その原因と結果の関係を因果関係(いんがかんけい)といいます。例えば、ワクチンを打った(原因)腕のところが赤く腫れた(結果)とき、腕が赤く腫れたことはワクチンが原因であるため、ワクチンと赤く腫れたことには「因果関係がある」といえます。しかし、ワクチンを打ったあとに雨が降ったとき、雨が降ったことはワクチンが原因ではない(ワクチンとは関係ない)ため、「因果関係はない」といえます。どちらの場合も出来事がおこる前にワクチンをうっているため、ワクチンと出来事との間には「時間的な前後関係がある」といえます。
この「前後関係」があることと、「因果関係」があること/ないことの判断は、科学的に検討することが大切です。

有害事象

 因果関係の有無を問わず、ワクチン接種など医薬品の投与や手術や放射線治療など医療行為を受けたあと患者(ワクチンを接種されたひと)におこった医療上のあらゆる好ましくない出来事のことをいいます。医療行為と有害事象との間に時間的に関連がある、前後関係はあるが、因果関係の有無は問わないということになります。そのため有害事象には、ワクチン接種後に偶然あるいは別の原因で生じた出来事も含まれます。しばしば、この時間的な前後関係をただちに因果関係であるかのようにメディアが報じたり、わたしたちがそのように誤解してしまうことがあることに注意が必要です。

副作用

 治療や予防のために用いる医薬品の主な作用を主作用といい、主作用と異なる作用を副作用といいます。広い意味での副作用(side effect)には、人体にとって有害な作用と有害でない(好ましい、肯定的な)作用の両方が含まれます。一般的には医薬品による副作用に対しては、有害な作用である狭い意味での副作用(adverse drug reaction)が使用されます。医薬品と副作用の間には前後関係があり、また副作用は医薬品の「作用」であるため、医薬品と副作用(による症状)の間には、因果関係があるということになります。

副反応

 ワクチン接種の主作用(ワクチン接種の目的)は、ワクチン接種によって免疫反応を起こし、ワクチンが対象とするVPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防げる病気)に対する免疫を付けることです。一方、ワクチン接種に伴う、免疫を付けること以外の反応や接種行為による有害事象を副反応といいます。言い換えると副反応とは「ワクチン接種による(狭い意味での)副作用と接種行為が誘因となった有害事象」のこととなります。そのため、ワクチン接種と副反応の間には前後関係があり、因果関係があるということになります。

表1 有害事象、副作用、副反応の違い
 概要因果関係前後関係
有害事象医療行為のあとに生じた医療上のあらゆる好ましくない出来事有無を
問わない
あり
副作用医薬品の主作用と異なる作用
・広い意味:有害の有無を問わない作用
・狭い意味:有害な作用
ありあり
副反応ワクチン接種による(狭い意味での)副作用と接種行為が誘因となった有害事象ありあり
図1 有害事象、副作用、副反応の概念図(下図)

副反応・有害事象の要因と症状

 副反応・有害事象の主な原因と症状を表2に示します。

1. 不活化ワクチンの一般的な副反応として、接種した抗原・アジュバンドやワクチン構成成分等でおこった炎症による局所反応(皮ふの発赤、皮ふが硬くなる、痛みなど)や全身反応(発熱、発疹など)があります。また、まれ(数十万〜100万分の1の確率)ではありますが重い副反応として、アナフィラキシー(重いアレルギーの症状)や脳炎・脳症などがあります。これらの副反応については、予防注射をする前に医療者から説明を聞いてください。とくによくおこる一般的な副反応については、症状が出現した時の対応(表3)まで含めて説明をうけてください。また、接種後のアナフィラキシーなどに対応するため、接種後30分は院内で経過観察を行ってください。

2. 生ワクチンでは、ワクチンによる弱い感染によって生じる副反応があります。

なお、局所の発赤や発熱などのよくおこる副反応は、軽い症状であるため、それ単独では予防接種後副反応疑い報告基準における医療者の報告義務規定にはあたりません。

表2 副反応・有害事象の主な原因と症状
ワクチン製剤の成分が原因の副反応
・アジュバンド等による炎症反応:局所の発赤、腫脹など
・生ワクチン由来の感染による症状:
   おたふくかぜワクチンによる耳下腺腫脹など
・アレルギー反応:アナフィラキシー(重いアレルギー)など
・成分に対する免疫応答との関連が疑われる事象:
   ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病など
接種行為や誤接種に伴う有害事象
・疼痛や恐怖心による失神
・無菌操作の破綻:局所の感染、菌血症など
・ワクチンの保管や準備段階でのエラー:膿瘍(のうよう)、ワクチン不全
・接種内容・方法の間違い:局所反応増強、神経障害
・接種不適当者への接種:避けられた副反応
参考文献1)を一部改変

表3 よくみられる副反応の経過と対応
注射したところの発赤・腫れ・硬結(皮ふが硬くなる)
おこる割合・経過
・ワクチンにより30%〜60%程度
・24時間以内に出現する
・発赤・腫れは3〜4日で消失する
・硬結は徐々に軽快するが1か月後も残存することがある
対応
・原則として治療は必要ない
・なるべく皮下深く接種する
・同一ワクチンの次回接種時には接種部位をかえる
・接種に伴う皮下膿瘍(のうよう)を鑑別する(極めてまれ)
発熱
おこる割合・経過
・ワクチンにより数%〜50%程度
・24〜48時間以内に出現する
・48時間以内に軽快する
対応
・冷却、アセトアミノフェン(解熱剤)投与
・ほかの原因を鑑別する
参考文献1)を一部改変

参考資料

参考文献・サイト

1)予防接種後の有害事象. 予防接種基礎講座(2017年3月開催資料). 厚生労働省.

2)予防接種法に基づく医師等の報告のお願い. 厚生労働省.

3)予防接種後副反応疑い報告書(別紙様式1). 厚生労働省.

4)予防接種法に関する報告の制度について. 医薬品医療機器総合機構(PMDA).

5)医薬品関係者からの報告. 報告受付サイト. 医薬品医療機器総合機構(PMDA).

6)予防接種実施者のための予防接種必携 令和4年度(2022). 公益財団法人予防接種リサーチセンター.

7)予防接種健康被害救済制度について. 厚生労働省.

8)医薬品副作用被害救済制度. 医薬品医療機器総合機構(PMDA).

9)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」 予防接種の副反応と有害事象. 日本小児科学会.

10)中山久仁子編集. おとなのワクチン. 南山堂, 東京, 2019.

  • https://archies-test2.com/vaccine4all/pics/news/news-105-1.jpg
    図1 有害事象、副作用、副反応の概念図

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