ワクチンと病気について
ワクチン情報
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン
- 2023-12-14
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて
商品名:
サーバリックス®(2価ワクチン)
ガーダシル®(4価ワクチン)
シルガード®9(9価ワクチン)
サーバリックス®(2価ワクチン)
ガーダシル®(4価ワクチン)
シルガード®9(9価ワクチン)
予防できる病気 | ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 |
ワクチンの種類 | 不活化ワクチン |
定期/任意 | 定期接種: ・小学校6年生〜高校1年生相当の女性 ・キャッチアップ接種(平成9年度~平成17年度生まれの女性) 任意接種:・サーバリックス® 10歳以上の女性 ・ガーダシル® 9歳以上の男女 ・シルガード®9 9歳以上の女性 |
接種回数 | 3回 (15歳未満でシルガード®9接種開始した場合は2回接種可) |
接種間隔 | ・サーバリックス®(10歳以上の女性) 標準:①②は1か月、①③は6か月あける 標準的な接種ができない場合: ①②は1か月以上、①③は5か月以上、かつ②③は2か月半以上あける ・ガーダシル®(9歳以上の男女) 標準:①②は2か月、①③は6か月あける 標準的な接種ができない場合: ①②は1か月以上、②③は3か月以上あける ・シルガード®9(9歳以上の女性) 1)1回目の接種を15歳以上で受ける場合 標準:①②は2か月、①③は6か月あける 標準的な接種ができない場合: ①②は1か月以上、②③は3か月以上あける 2)1回目の接種を15歳未満で受ける場合は2回接種で完了も可 標準:①②は6か月あける ①②は少なくとも5か月以上あける。5か月未満で②を行った場合は③が必要(その場合②③は3か月以上あける) (①:1回目、②:2回目、③:3回目) |
接種量 | 1回0.5ml |
費用 | 定期接種:無料 任意接種: サーバリックス®、ガーダシル®は3回接種で約4〜5万円 シルガード®9は3回接種で約8〜10万円、2回接種で約5〜7万円 |
ワクチンの効果
HPVワクチンの目的は、子宮頸がんをはじめとするヒトパピローマウイルス(HPV)感染症の原因となるHPVの感染を予防することです。HPV感染を予防することで、子宮頸がんやその前がん病変(異形成、子宮頸部上皮内腫瘍)の発生を減らし、最終的に子宮頸がんによって亡くなる人を可能な限り減らすことを主な目的としています。
わが国では現時点で3種類のHPVワクチンが承認されています。2価ワクチンと4価ワクチンは子宮頸がん全体の50〜70%の原因を占めるHPV16型と18型の感染予防を主な目的としています1)。2価ワクチン(サーバリックス®)はHPV16型と18型の2種に対応します。4価ワクチン(ガーダシル®)はHPV16型、18型に加えて、性器の良性病変である尖圭(せんけい)コンジローマの原因となるHPV6型、11型にも対応し、尖形コンジローマも予防します。
9価ワクチン(シルガード®9)は2021年2月に発売されたワクチンです。4価ワクチン(ガーダシル®)がカバーするHPV6、11、16、18型に加えて、HPV31、33、45、52 、58 型を含むことで、子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーします2)。2023年4月から、9価HPVワクチンが定期接種として接種可能となりました。
HPV に感染してからがんになるまで時間がかかるため、以前はワクチンの効果はHPV感染率低下や前がん病変の減少で評価されていましたが、ここ数年でHPVワクチン接種と子宮頸がん発症減少に関する報告が出てきています。10〜30 歳の女性に対する4 価HPVワクチンの効果を検討したスウェーデンの研究3)では、非接種群と比較して、接種群の子宮頸がんの罹患率比は0.37(95%信頼区間〔CI〕0.21〜0.57)と低く、17 歳未満で接種した女性は、17〜30 歳で接種した女性に比べて、子宮頸がんの発症が88%減少しました。デンマークにおけるコホート研究4)でも、20歳未満でのワクチン接種による子宮頸がん罹患率の低下が認められています。
ただし、HPVワクチンは接種時にすでに感染しているHPVは排除できず、すでに生じているHPV感染症の進行予防効果もありません。そのため、HPVに感染するリスクである性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することが望ましいとされています。また、HPVワクチンはすべてのタイプのHPV感染を予防できるわけではないため、HPV接種後も定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。
2020年12月には肛門がんや尖圭コンジローマの予防を目的として9歳以上の男性にも4価ワクチン(ガーダシル®)を接種できるようになりました。現在、男性への接種は任意接種ですが、海外では男性に対して定期接種を行なっている国もあります。なお、2価ワクチン(サーバリックス®)と9価ワクチン(シルガード®9)の国内での適応は女性のみです。
わが国では現時点で3種類のHPVワクチンが承認されています。2価ワクチンと4価ワクチンは子宮頸がん全体の50〜70%の原因を占めるHPV16型と18型の感染予防を主な目的としています1)。2価ワクチン(サーバリックス®)はHPV16型と18型の2種に対応します。4価ワクチン(ガーダシル®)はHPV16型、18型に加えて、性器の良性病変である尖圭(せんけい)コンジローマの原因となるHPV6型、11型にも対応し、尖形コンジローマも予防します。
9価ワクチン(シルガード®9)は2021年2月に発売されたワクチンです。4価ワクチン(ガーダシル®)がカバーするHPV6、11、16、18型に加えて、HPV31、33、45、52 、58 型を含むことで、子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーします2)。2023年4月から、9価HPVワクチンが定期接種として接種可能となりました。
HPV に感染してからがんになるまで時間がかかるため、以前はワクチンの効果はHPV感染率低下や前がん病変の減少で評価されていましたが、ここ数年でHPVワクチン接種と子宮頸がん発症減少に関する報告が出てきています。10〜30 歳の女性に対する4 価HPVワクチンの効果を検討したスウェーデンの研究3)では、非接種群と比較して、接種群の子宮頸がんの罹患率比は0.37(95%信頼区間〔CI〕0.21〜0.57)と低く、17 歳未満で接種した女性は、17〜30 歳で接種した女性に比べて、子宮頸がんの発症が88%減少しました。デンマークにおけるコホート研究4)でも、20歳未満でのワクチン接種による子宮頸がん罹患率の低下が認められています。
ただし、HPVワクチンは接種時にすでに感染しているHPVは排除できず、すでに生じているHPV感染症の進行予防効果もありません。そのため、HPVに感染するリスクである性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することが望ましいとされています。また、HPVワクチンはすべてのタイプのHPV感染を予防できるわけではないため、HPV接種後も定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。
2020年12月には肛門がんや尖圭コンジローマの予防を目的として9歳以上の男性にも4価ワクチン(ガーダシル®)を接種できるようになりました。現在、男性への接種は任意接種ですが、海外では男性に対して定期接種を行なっている国もあります。なお、2価ワクチン(サーバリックス®)と9価ワクチン(シルガード®9)の国内での適応は女性のみです。
どんな人にお勧め?
HPVに感染する機会となる性交渉を経験する前にHPVワクチンを接種することをお勧めします。性交渉歴があるひとにもまだ感染していない型のHPVへの予防効果が期待できます。
前述のように、HPVワクチンは若年ほど効果が期待できますので、11〜12歳以降早めの時期に接種することが勧められます。米国では26歳までの全ての成人に接種が推奨されており、27歳〜45歳については有益性について相談が必要とされています5)。
前述のように、HPVワクチンは若年ほど効果が期待できますので、11〜12歳以降早めの時期に接種することが勧められます。米国では26歳までの全ての成人に接種が推奨されており、27歳〜45歳については有益性について相談が必要とされています5)。
「積極的接種勧奨の差し控え」について
2013年4月1日よりHPVワクチンの定期接種が開始されましたが、疼痛や運動障害を中心とした多様な症状が報告され、マスコミ等でも多く報道されました。
2013年6月14日、厚生労働省の審議会にて「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛の発生頻度等が明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」とされ、積極的勧奨差し控えという対応がとられました。
その後、国内外におけるリスク(安全性)とベネフィット(有効性)に関するエビデンスについて評価が行われています。国内においても、名古屋市で大規模な調査が行われましたが、HPVワクチン接種者と非接種者において症状の出現に有意差がなく、HPVワクチンと多様な症状との因果関係は示されませんでした6)。海外を含めても、現在までにHPVワクチンが原因であるという因果関係を証明する科学的・疫学的根拠は示されていません。
それらを受けて、2021年10月1日、11月12日に開催された厚生科学審議会副反応検討部会・安全対策調査会合同会議において、「積極的勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当」との判断に至り、2022年4月より個別勧奨の再開が決定されました7)。
2013年6月14日、厚生労働省の審議会にて「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛の発生頻度等が明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」とされ、積極的勧奨差し控えという対応がとられました。
その後、国内外におけるリスク(安全性)とベネフィット(有効性)に関するエビデンスについて評価が行われています。国内においても、名古屋市で大規模な調査が行われましたが、HPVワクチン接種者と非接種者において症状の出現に有意差がなく、HPVワクチンと多様な症状との因果関係は示されませんでした6)。海外を含めても、現在までにHPVワクチンが原因であるという因果関係を証明する科学的・疫学的根拠は示されていません。
それらを受けて、2021年10月1日、11月12日に開催された厚生科学審議会副反応検討部会・安全対策調査会合同会議において、「積極的勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当」との判断に至り、2022年4月より個別勧奨の再開が決定されました7)。
接種スケジュールのポイント
小学校6年生〜高校1年生相当の女子が定期接種の対象者で、接種回数は3回です。9価ワクチン(シルガード®9)は、15歳未満に1回目を接種すると2回接種で完了することもできますので早めの接種開始が望ましいといえます。
【小学校6年~高校1年相当の女の子と保護者の方へ】リーフレット 概要版
【小学校6年~高校1年相当の女の子と保護者の方へ】リーフレット 詳細版
【小学校6年~高校1年相当の女の子と保護者の方へ】リーフレット 概要版
【小学校6年~高校1年相当の女の子と保護者の方へ】リーフレット 詳細版
*キャッチアップ接種8)
「積極的接種勧奨の差し控え」の影響で、接種機会を逃した方は、キャッチアップ接種として定期接種が可能です。
<対象>下記2つの条件を満たす人
・平成9年度生まれ〜平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)の女性
・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない女性
<期間>令和4(2022)年4月〜令和7(2025)年3月までの3年間
上記以外にも平成18(2006)・19(2007)年度生まれの方は、通常の接種対象年齢を超えても、令和7(2025)年3月末まで接種できます。
【キャッチアップ接種リーフレット】
<対象>下記2つの条件を満たす人
・平成9年度生まれ〜平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)の女性
・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない女性
<期間>令和4(2022)年4月〜令和7(2025)年3月までの3年間
上記以外にも平成18(2006)・19(2007)年度生まれの方は、通常の接種対象年齢を超えても、令和7(2025)年3月末まで接種できます。
【キャッチアップ接種リーフレット】
*交互接種について
2価・4価・9価HPVワクチンは、同じ種類のHPVワクチンで接種完了することを原則としますが、医師とワクチン接種を受ける人等がよく相談した上で、残りの接種に9価HPVワクチンを選択しても差し支えありません8)。
なお、2価または4価HPVワクチンで接種を開始し、定期接種として9価HPVワクチンで接種を完了する場合は、9価HPVワクチンの接種方法に合わせ、1回目と2回目の間隔を1か月以上、2回目と3回目の間隔を3か月以上空けて接種します。また、キャッチアップでも、交互接種を実施して差し支えありません。
なお、2価または4価HPVワクチンで接種を開始し、定期接種として9価HPVワクチンで接種を完了する場合は、9価HPVワクチンの接種方法に合わせ、1回目と2回目の間隔を1か月以上、2回目と3回目の間隔を3か月以上空けて接種します。また、キャッチアップでも、交互接種を実施して差し支えありません。
ワクチンの副反応
主な副反応として、発熱や接種した部位の痛みや腫れ、注射による痛み、恐怖、興奮などをきっかけとした失神などが報告されています。頻度は非常に少ないですが、アナフィラキシー(約96万接種に1回の割合)、ギラン・バレー症候群(約430万接種に1回の割合)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(約430万接種に1回の割合)などの重い症状が報告されています。
ワクチンの禁忌
HPVワクチンによる強いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがある場合以外に禁忌はありません。
参考文献・サイト
1)ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関するファクトシート(平成22年版). 国立感染症研究所.
2)9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンファクトシート(令和3年1月31日)国立感染症研究所.
3)Lei J, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. NEJM. 2020 Oct 1; 383(14): 1340-1348.
4)Susanne KK, et al. Real-World Effectiveness or Human Papillomavirus Vaccination Against Cervical Cancer. J Natl Cancer Inst. 2021 Oct 1; 113(10): 1329-1335.
5)HPVワクチンの推奨(英語). 米国疾病管理予防センター(CDC)
6)Suzuki S, et al. No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study. Papillomavirus Res. 2018 Jun; 5: 96-103.
7)HPVワクチンの接種に関係する医療従事者向けリーフレット「医療従事者の方へ 〜HPVワクチンの接種に当たって〜」. 厚生労働省.
8)ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~. 厚生労働省.
2)9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンファクトシート(令和3年1月31日)国立感染症研究所.
3)Lei J, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. NEJM. 2020 Oct 1; 383(14): 1340-1348.
4)Susanne KK, et al. Real-World Effectiveness or Human Papillomavirus Vaccination Against Cervical Cancer. J Natl Cancer Inst. 2021 Oct 1; 113(10): 1329-1335.
5)HPVワクチンの推奨(英語). 米国疾病管理予防センター(CDC)
6)Suzuki S, et al. No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study. Papillomavirus Res. 2018 Jun; 5: 96-103.
7)HPVワクチンの接種に関係する医療従事者向けリーフレット「医療従事者の方へ 〜HPVワクチンの接種に当たって〜」. 厚生労働省.
8)ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~. 厚生労働省.
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